音工房



コンプレッサーで仕上げる

収録した曲を更に仕上げるために、コンプレッサーは欠かせません。しかし、アウトボードやプラグインのコンプレッサーを持っていない人は当然ながらいるはずです。 そんなときはどうすれば巧く仕上げられるのか。それを少しだけお教えしましょう。 このコラムを見るのはWindowsを使っている方が多いと思いますので、ここではフリーでありながら市販品と同等以上に高機能なSoundEngineを使用します。

-加工前-

さて、ここにS4とTRITONを使って5分で適当に打ち込んだ、ゲームのリザルト画面などで流れていそうな(笑)曲があります。 これはシーケンサを走らせながら単純にSoundEngineで収録したものですが、なんともひ弱な波形ですねー。
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-ノーマライズ-

ではこのひ弱な波形を鍛え上げていきます。ということで、まずは解像度を最大限に使うためにノーマライズします。 しかし、少し大きくなったかな?という程度しか音量が増加してません。波形を見ると、スネアだけ妙に飛び出していますね。 聴いた感じではそれほど突出しているようには感じられないんですが、この無意味な突出のせいでノーマライズしても全然音が大きくならないのです。
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-突出を抑える-

ならば、このスネアを感覚上その違いがわからない程度に抑えつけてしまいましょう。ここでコンプレッサー(リミッター)の出番です。 コンプレッサーとリミッターの仕組みは同じですが、一般的に後述のレシオが10:1以下の場合にコンプレッサー、それ以上でリミッターといいます。 「音量」コマンドからRMSコンプレッサーを開くと・・・
コンプの設定
なにやら面倒そうな設定が出てきました。それぞれの用語を解説します。

スレッショルド
ここで設定した値より入力信号が大きくなると圧縮を開始します。上記を例にするなら信号の大きさが-8.5dBを超えた時に圧縮します。

レシオ
スレッショルド値以上の信号をどの割合で抑え込むか設定します。この場合、レシオは∞:1、つまりスレッショルド値を超えたら完全に抑え込むことを意味します。 仮にこの値が2:1とすると、スレッショルド値を超えた入力信号が2dB大きくなると出力信号は1dB大きくなります。よって半分に圧縮されるわけです。

アタック(タイム)
信号の大きさがスレッショルド値を超えてから、圧縮を開始するまでの猶予時間です。若干の猶予を設けることでノイズを低減したり、アタック感を出すことができます。

リリース(タイム)
信号の大きさがスレッショルド値を下回ってから、圧縮を元に戻すまでの猶予時間です。若干の猶予を設けることで音量変化を滑らかにすることができます。

RMS
Root Mean Squareの略で、実効値という意味です。 物理学の専門的な話になるので詳細は割愛しますが、この値が大きいと波形全体の力が強い時に圧縮し、小さいとパルス的なピーク値が大きい時に圧縮します。

ステレオリンク
左右チャンネルの圧縮を同期させるレベルです。 これを大きくすれば、片方のチャンネルがスレッショルド値を超えた時、もう一方のチャンネルがスレッショルド値以下であっても両チャンネルを圧縮します。

先後読み
マイナス値で先読み、プラス値で後読みになります。信号を先(後)読みし、次の信号レベルを推測することによって滑らかなアタック(リリース)を行ないます。

ボリューム
・・・説明の必要はありませんね(笑)。

さて、コンプレッサーをかけたらこうなりました。波形ではスネアの突出が抑えられたのが確認できますね。 で、音を聴くと・・・どうでしょう。コンプレッサーをかける前とほとんど、というか全く変わってないように聴こえるでしょう。これがコンプレッサーの威力です。 そして、これをまたノーマライズすればスネアが抑えられた分だけ全体的な音量を稼ぐことができるということは簡単に理解できますね。
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-コンプとノーマライズを繰り返す-

再度ノーマライズして、コンプをかけて(もちろん毎回設定を微調整する必要はあります)、更にまたノーマライズして・・・と、この作業を数回繰り返し行なったらこうなりました。 どうですか? 波形の密度が高くなって、音量もかなり大きく聴こえるようになったでしょう。 つまり、音圧を上げるにはノーマライズだけでは不十分で、コンプレッサーも使わなければいけないのです。 しかし、この辺りまで密度を上げると、余計な部分を抑えつけるのが難しくなってきます。
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-オートマキシマイズ-

そこで、SoundEngine自慢のオートマキシマイズを使いましょう。このコマンドは最初から使っても効果アリなのですが、コンプで音の粒を揃えてから使うとより効果的なのです。
オートマキシマイズ設定
一般的に市販の楽曲は-13dBから-11dB程度の圧力がありますので、今回は中間の-12dBに設定することにしましょう。OKボタンをポチっとな。
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どどーん! 最初とは比べもつかないほどの密度! しかもレベルメーターはクリッピングしていません。 普通にボリュームコマンドで音量を上げたらバリバリバリッという雑音と共にクリップしてしまいます。実際に聴いてみて最初の音との迫力の違いはどうですか? 全く別物のようになりましたね。

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